IC 706の修理              PLL基板電源部分の電蝕によるパターン消滅    

7〜8年くらい前に購入して 車載で使ってきた IC706 が先日 故障しました 電源スイッチを押してもまったく無反応です さっそく 車から降ろして修理を開始しました 

車両は40年前の セリカ(TA-41)です IC706 の本体は座席の下に置き 別売の延長ケーブルで表示器部分と接続しています

写真の運転席はIC706の表示器部分を取り外していますが ハンドル右下のスペースに両面テープで固定していました

ケースを外し まずは目視点検から始めました 幸か不幸か 不良個所はすぐに分かりました

PLL基板の電源部分でした

右の写真 真中の黒い長方形は冷却ファン
この左下フラットケーブルの右が  現場??です(黄色の矢印)

7ピンコネクターの左端 赤リードの繋がるピンの足が腐って無くなっています ほとんど原型がありません  

周辺の基板のパターンも約10mm四方 腐って形がありません  ここにあったチップ部品も消えています(どこかに落ちたのでしょう)

左の写真、黒い正方形は3端子レギュレータです (電解コンデンサの リードは切り離した状態)

これでは電源が供給できません  さてどうしよう と考えました

家電品なら間違いなく基板交換です

左の写真は 良品の同じ部分です  

3端子レギュレータは TA7805F 

原因を推定する・・・

7ピンコネクター(写真の上)の左端のピンには 常時+12Vが掛っています (電源スイッチを切っても掛っています)
IC706の本体は 座席の下に置いてあります 過去に窓ガラスを閉め忘れて 雨が車内に降りこんだ ことがありました

@ ケースを通して浸透した水が基板に掛かった
A 直流+12Vのピンの上に水がつき 電気分解が起った
B 電蝕が進み パターンが腐食し チップコンデンサが剥がれ落ちた 

C 10年くらい前の電解コンデンサには有名な「液漏れ」故障がある が この部分には使用していない ので無関係 

故障個所は分かりましたが 電源だけの不良で PLL基板を交換するのも ばかばかしい話 です(メーカ修理なら絶対 基板交換になる故障です)  

そこで ICOMのサポートセンターに相談メールを送りました  

回答のメールを直接公開するわけには行きませんが @ PLL基板のみの販売はしない  A 修理費用は実機を持ち込んで拝見しないと金額は出せない  B 費用は技術料¥7800+部品代   との回答でした 

相当 高額になることが想像できます

ただ ありがたいことに 回路図は公開できるから と IC706の全結線図を送っていただきました

LSIがあちこちに使われており このあたりの故障だと 手が出ません(ICも当然入手不可)が 今回は電源回りです  さっそく消えたパターンの推測を始めました
 
チップ部品がどこかに消滅していましたが いずれも電源回りのパスコンです 無くても応急的な動作は可能なはずです 

3端子レギュレータ (IC2) の動作を確認してみました 3端子レギュレータは出力をショートさせてもまず壊れません。基板のはんだ付けを外して 単体で12Vを入れてみると 5Vの出力がありました この部品はOKです

回路図によると 7ピンコネクター(J1)の赤 「HV」はJ2にも送られているはずですが J2のピンに導通がありません パターンが腐食して消滅しているので ここは 細いリード線で配線を再生しました 
切れている スルーホールが 2ヶ所 あり  ここも手直ししました (なかなか分かり難い)

一応のパターンを細い電線で修復して導通テストを繰り返し 電源を入れて見ました 
 
見事 IC706は生き返りました   

かけた時間と手間は大変でしたが 費用はゼロ円。  もっともプロは腐食した基板を修理することは無く 必ず交換します(再修理が怖いのでしょう) 

ICOMサンの回路図公開は大変ありがたいです    家電メーカーやパソコンメーカーでは回路図を公開しません (パソコンは回路図が あっても あまり役立たないかも知れません が ・・・) 

ただ 水滴が付着する可能性のある場所に常時直流が印加されている部品を配置するのは「設計ミス」だと思います  やむをえない なら防水処理をするべきです  ただ 近くにリレーがあるので下手に「シリコン」を使うとリレーの接触不良(接点に酸化シリコンができる)を誘発する可能性もあります 

ICOMのリグは何台か使用していますが 「はんだ付け不良」が多いです   自分で修理する分には 部品代が掛からない ありがたい故障です    ちなみに 同年代のケンウッドのリグはいちども故障を起こしていません




7MHZ周波数拡大作業

基板修理のついでに 7MHZの周波数を拡大する改造作業をしました

改造の方法は i com のホームページ (現在は削除されています)に書かれていますので 指示どうりの作業をしました(D58にダイオードを半田付けする) メーカー指定部品名 DAN222TL  部品コード 1750000520 @¥105

ダイオードを1個取り付けるだけですが メーカーに送ると¥1万位の出費になるようです  取り付けるダイオードも部品番号が指定されています が 要はDCを供給するだけのことですから 手持ちの整流用ダイオードの一番小さいのを 基板にはんだ付け しました

あたりまえですが あっさり 7.5MHZまで送信できるようになりました   手持ち部品を使用した ので当面の出費はゼロ円  




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