今回、蓄音機を入手して色々とトラブルが発生し、修理を自分の手で行い、また、それを機にオーバーホールを行った。同じ様なトラブルであきらめようとしている方に、多少でも参考にしていただきたいと思います。
ただし、私は骨董品収集家ではなく、オーディオ機器として蓄音機をとらえていますので、骨董的価値としてオリジナリティーを求める方には一部向かないところもあります。
ゼンマイモータ修理


ゼンマイモータ

蓄音機を入手直後に、ゼンマイが巻けなくなるトラブルが発生した。
これが機会で、蓄音機を分解して構造を詳しく知ることができ、オーバーホールをするきっかけになった。

ゼンマイモータは、軸受兼用となっているカバーを外すと簡単に取り外すことが出来る。ゼンマイモータの蓋は歯車兼用となっているので、これを外すと中にゼンマイが見える。ゼンマイが切れている場合はこれを取り替えなければならない。
今回のトラブルの原因は、ゼンマイ終端の穴にゼンマイケースのピンが引っかかるようになっているが、このピンが取れてしまったのが原因であった。ピンの代わりにM3のトラスねじをピン代わりに取り付けて修理が完了した。

しかし、ピンはゼンマイケース内部から取り付け無ければならず、ちょっと作業がやっかいだ。ゼンマイがもどっているとケース内面はゼンマイのばねが密着しているために取付は出来ないからである。ゼンマイを取り出すか、巻いたままの状態で作業する必要がある。ゼンマイを取り出すと後で納める自信がないため、単体の状態で巻くこととした。
万力で軸を挟み、取れたピン穴に外から仮のビスをねじ込んでおいてゼンマイの端をとらえ、ケースを回してゼンマイを巻く。ケースは丸くてつかみにくいため、蓋の取付穴を利用してハンドル代わりの金属棒を取り付けた。ゼンマイが巻かれたところで、ラジオペンチでゼンマイの端をつかんでおいて、仮ビスを外し、今度は内側からトラスねじをはめて外側でナット締めする。
一人では、なかなか難しい。

ゼンマイモータの内部は、どういう訳かグリスが充填してある。ガソリンで洗浄し、新しいグリスと交換して完了した。ゴトゴト音もなくなり、非常に快適に動作するようになった。

ゼンマイが切れた場合は、ゼンマイを新しい物と取り替える必要があるが、現在ゼンマイの入手は困難である。ところが、シャルマン林コレクションといったマニア向けのショップがあり、ゼンマイの交換を1万円前後で請け負ってくれるので、あきらめないでよい。

速度調節機構バネ折れ修理


速度調節機


折損した板バネ


メジャーのメモリ板で代用


バネ鋼の加工用工具

速度の調節器の板バネが折損すると、回転数がどんどん上がってしまう。

この板バネはの代用品をホームセンターで色々探していたところ、メジャーのメモリ板を見つけた。幅の5〜6mmのメジャーは、幅はぴったり、バネ定数も同じくらいだが、加工が出来るかどうかが問題である。
思った通り、穴は普通のドリルの刃では全くお手上げである。何回も失敗を繰り返し、ついに加工に成功した。

左の写真がバネ鋼を加工した道具である。金切りハサミで必要な長さにカット、焼入れされた太い針で穴開けのポンチを打ち、ダイヤモンドチップのついた超硬ドリルで穴開けする。

メモリ板の塗装をすべて剥がせばオリジナルと同じ地肌になるが、見えないし錆止めにもなるので、そのままにしておいた。

サウンドボックス防振ゴム交換


取り付け口は2種類ある


イスの足用クッションゴムを加工したとは思えない


カットして穴あけ加工する

色々な物が市販
されている。

サウンドボックスのアーム取付け口には、防振ゴムがついているが、経年の劣化で硬化して割れていたりしている場合が多いと思う。私の蓄音機もゴムは完全に硬化し、取り付け部は欠けてしまっており、取り付けるとぐらぐら状態であった。
そこで、ホームセンターで使えそうな物を物色していると、ぴったり使えそうな物を見つけた。それが、左の写真のようなイスの足に取り付ける、滑り止めのゴムキャップだ。

サウンドボックスには、取り付け穴にホース状のゴムを挿入するタイプと外側の溝にはめてアームを包み込むタイプの2種類がある。ゴムはそのどちらにも対応するので便利だ。

ホームセンターに行くと色々な形の物があるので、お手持ちのサウンドボックスに合わせて選択する。
私は、上記の2タイプの物に取り付けたが、どちらも見栄え良く、アームにぴったりフィットさせることができた。

写真の青いタイプのもには、内径18mmの写真のようなゴムを使い、口の部分を必要な長さだけ切って使用した。
黒い方は、21mmの肉厚の薄い物を使い、今度は逆に底の部分を使用する。こちらは、アームの外形18mmの穴を底に開けなければならない。穴開けは、彫刻刀をノミのように使用して開けたので多少ギザギザになってしまったが、18mmの皮用の穴開けポンチがあればきれいにあけることが出来る。
トーンアーム軸受けベアリング交換


中にベアリングが入っている
トーンアームの取り付け部分には、アームの回転を円滑に動かすためベアリング機構となっている。
私の入手した蓄音機は、このベアリングが抜けていた。たぶん、以前の所有者が不注意にアーム部のねじを外したため紛失してしまったのだろう。

ホームセンターに行くと、右の写真のように色々な直径のスチールボールが売っている。これをピンセットで根気よく並べて行き、復活させることが出来た。


市販されている金属ボール
ターンテーブル整備


ぼろぼろになったフェルト

ターンテーブルは、鉄板の成型品の上にフェルト布が貼ってある。
40年以上も経過すると、フェルトも左の写真のようにぼろぼろになってしまっており、鉄板もメッキが剥がれて発錆する。

そこで、手芸店でフェルトを購入し円形に切り取って貼り付け、鉄板の表面の錆を落としてシルバーメタリックの塗装を施した。

ちょっときれいになりすぎた感もあるが・・・。


フェルトを張り替えたターンテーブル
サランネット交換


私が入手した蓄音機には、下左の写真のようにオリジナルのサランネットがついていたが、時代を感じさせる古い物で雰囲気は良いが私は骨董趣味は無いのでリフォームしてみた。
この蓄音機のサランネットは、スピーカーと同じように枠板に張られており(写真下中央)、上部に引き出して外すことが出来るため作業は容易だ。

最近は、オーディオショップにもほとんどサランネットは置いてない。インターネットでサランネットを小分けして販売していただける音屋工務さんのホームページで入手した。


時代を感じさせるサランネット


スピーカと同じ要領で張り替え


きれいになったサランネット
グリスの交換

内部の機構部は、歯車、軸受、ゼンマイ等にグリスが塗布されている。しかし、長年使用されていたり、放置されているとグリスの油分が蒸発して硬化して十分な性能を発揮できない場合がある。グリスは消耗品であり、定期的な交換が必要である。
できれば、部品を外してガソリンか灯油で洗浄し、新しいグリスを塗っておきたい。

グリスは、どんな物が良いのかといいますと、リチューム石鹸系のベアリング用グリスが一番よろしいかと思う。
銘柄は色々あるが、私の好みではサンライトEM1かマルチノックNo1をお勧めしたいが、有名石油メーカの「ベアリンググリスの1号」であれば大丈夫である。号数は、数値が大きくなるほど粘度が大きくなり、蓄音機のような精密機械では1号より大きい粘度の物は抵抗が大きくなるので注意が必要だ。
入手方法は、ガソリンスタンドか自動車の整備工場などに相談すれば分けてもらえるかも知れないが、メーカを気にしなければホームセンターでも扱っている場合がある。

釣道具のリール等にも使用できるので、揃えて置くと何かと重宝する。

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